ボイストレーニングコラム

独学のボイストレーニングでも歌は上手くなれるのか?

歌が上手くなりたいけどボイストレーニングに通うのには費用がかかる……それなら独学でやってみよう!という方は数多くおられると思います。確かに現在はネットで検索すればボイストレーニングのレクチャー記事が多数読める時代ですから、できない事はない気がしますよね。では、独学でどこまで歌はうまくなれるのか、またどんなメリット・デメリットがあるのかについて解説していきます。

独学でも一定のレベルまで上手くなることは可能!

例えばゼロから始めれば、独学で始めても、もちろん上達はします。本屋さんに行けばさまざまな教材を買うことができますし、何よりも現在はインターネット上にさまざまな方法が動画付きで存在していますから、一見何とかなるように見えるでしょう。

特に目指すところがなく、カラオケで知り合いに「ちょっとうまくなったね」と言わせたいのであれば、そのような練習方法でもある程度の上達はするでしょう。また、仮にプロを目指すとしても、独学で目指すことは絶対に無理とは言いません。現在プロとして活動している人にも、特にプロからの指導を受けずに上達した、という人も存在します。今も活躍する人たちの中には、プロデビューまで一切指導を受けておらず、日々の路上ライブで技能を上げていったという方もいらっしゃいます。

こういう話を聞くと希望が持てる、と思うかもしれません。しかし裏返して言えば、非常に希少な例だからこそプロデビューできたのだということでもあります。

客観的な評価がもらえない、モチベーションが続かない……独学の落とし穴

独学でも、ある程度の知識を得ることはできますから、一見上達しているようには感じる時期があると思います。しかしいくつかの大きなデメリットがありますので、それを解説しましょう。

プロの歌声を参考にしながら練習することができない

恐らく独学だと好きなアーティストの楽曲を何度も聞いたり、インターネット上の動画サイトの練習方法などを見たりして練習する人が多いでしょう。もちろんそれらは参考になるとは思いますが、あくまでも参考にすぎません。

この練習方法の落とし穴は、2点あります。まず、それが生歌ではない、ということです。基本的にパソコンやスマートフォンなどを経由している時点でデジタル音ですから、生のものとは全く違います。

2点目は、その歌はあなたの練習のために歌っている訳ではない、ということです。例えば料理について全く素人の人が、美味しいものを食べてそれを再現しようとしていることを想像してみてください。もちろんそれを目にすれば大まかな材料はわかるでしょう。しかし、調味料や調理方法などの細かいレシピを教えてくれるわけではありませんから、「なんとなくそれっぽい」ところまで行くことはできても、それを再現したり、それに匹敵するものを作ったりすることは非常に困難だと思います。

ましてそれを食べた、ということは直接触れている訳ですが、DVDや動画サイトから聞こえてくるのは生の音ではありませんから、実際の音とは全く違うと思ってください。

練習している方法が自分にあっているのかわからない

プロのトレーナーと向かい合って練習する最大のメリットは、あなたの声や歌い方を聞いた上で、適切な指導をしてくれるという点です。当然のことですが、資料や動画サイトは一方通行で教えてくれるだけで、その方法があなたに合っているのか、あなたが正しくそれを修得できているのかなどはわかりません。

例えば「高音が伸びるようになった」「ミックスボイスを使えるようになった」、あなたがそう思っても、それが正しいのか、全く裏付けはないのです。プロのトレーナーならその場で間違いを正してくれますから、自分が正しい方向にいると実感しながら練習ができます。

「喉声」に陥ってしまう人が多い

上の項目でも書いた「高音」や「ミックスボイス」、これらは何の練習もせずに身につけている人はほとんどいませんから、誰もがトレーニングで習得していきます。しかし独学で練習していると、「喉声」と呼ばれる状態になっていることが多いのです。

プロの指導では、高音・低音によらずのどに力を入れないような指導をします。これはきれいな発声のためでもありますが、のどを痛めずに歌う方法でもあるのです。

上達を実感することが難しく、モチベーションを保てない

きちんとした指導を受けていれば、何ができていて何が足りないのか、その都度教えてくれますが、独学ではそれがありません。頑張っていてもきちんとした方向に向かっているのかも分かりませんし、正しいテクニックを修得できているのかもわかりません。仮にできているとしても、評価してくれる人がいませんから、それに自信を持って自分の技にするということが難しいのです。そのためモチベーションを維持することが難しく、行き詰まってしまうことが多いようです。

自分に合った歌い方がわからず、癖が付いてしまうと、結果的に理想の歌声が遠のいてしまう

独学で練習していると自分に合った方法で行っているのか、正しい方向に向かっているのかわかりません。しかし熱意があれば基本を無視した形でも進んで行くでしょうから、ある意味怖い面があります。良くないクセがついたり、悪い方向に向かっていても誰もそれを止めてくれず、修復が困難な状態に陥ったりします。さらに悪い場合は、のどを痛めてしまい、本来持っていたはずの可能性を失ってしまうことすらあるのです。

また、トレーナーがついて指導していれば間違いをすぐ指摘してくれるので、上達が早いというメリットがあります。逆に独学で歌を練習することは、迷っている時間も増えますし、一つの技術を習得するのにも手間がかかりますから、大事な時間を失い続けているということでもあります。

まとめ

ボイストレーニングは独学でもある程度の上達はできると思います。とはいえその上達が正しいのかどうか、それは誰も指摘してくれません。目指すところがカラオケで少しばかり自慢したい、という方ならそれで何の問題もありませんが、プロを目指すような方なら、きちんとしたトレーニングを受けることをお勧めします。もちろんお金はかかりますが、それに見合う上達がありますし、大事な時間を無駄にしない、のどを潰すようなリスクが無く長く歌っていけるという大きなメリットがあります。

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