「音痴」というのは日常生活の中ではさほど気にならないようですが、心の中でコンプレックスとして存在しているという方は数多くおられます。特に、唐突にカラオケに誘われてしまったときなどはなかなか快諾できないのではないでしょうか。
「できれば音痴を克服したいけれど、自分自身が下手だと思っているだけに恥ずかしくてボイストレーニングにも行きにくい」「行っても自分の音痴は治らないんじゃないか」……これはそう思っている方のためのコラムです。
音痴の原因①…声が出ていない
「音痴」と呼ばれる人の中には、いくつかの歌を歌うのに際し苦手な要素が含まれています。その中の大きなものは、「声がでていない」「音程が取れていない」「リズムがとれていない」の3つです。
そのうちの声が出ていないことについては、才能などの要素が低く、トレーニングである程度のカバーがしやすい部分です。具体的には腹式呼吸を取り入れたり、声帯をきたえたりすると、多くの人が向上します。また、姿勢を正しくすることも重要です。
発声が悪い人の多くは、声を出すことを無意識に行いすぎているケースが目立ちます。これは文章では伝えにくいことですが、息が声帯に当たることによって声が出る、という意識を持つことで改善することが可能です。また、声を響かせる技術を学ぶことでも、格段にレベルアップすることができます。声の響きを生み出すのは、「口腔(口の中)」、「鼻腔(鼻の中)」、「上咽喉(のどの上部)」の3ヶ所を広げて声を共鳴させるというテクニックです。
実感したことが無い方は「何を言っているのかわからない」と思われるかもしれませんが、ボイストレーニングではこのようなことも実践しながらわかりやすく習得できます。
音痴の原因②…音程が取れていない
この「音程が取れていない」という部分こそ、一般的に言う「音痴」と思われている部分です。
これに対してはハミング法という練習が有効です。鼻歌で「あー」とか「うー」という音だけを歌ってみて、歌詞に惑わされることなく音程がとれているかどうかを自己判断しながら練習することができます。道具を使わず、場所もほとんど選ばないので、大変便利な練習方法です。
音程のずれが自己判断できることが前提ですが、もしこれが難しいという方は、同じことを耳をふさいだ状態でやってみましょう。これは骨伝導を利用した方式で、頭部の骨に直接響くので音程のずれがわかりやすくなります。このように正確な音程をわかるようになっていけば、「音痴」の大部分は改善されていきます。
ピアノがあって正しい音が判断できる人がいれば、そのピアノに合わせて音を出すことが非常に有効な練習になります。また、カラオケに行って、歌詞を歌うのではなく、曲に合わせてハミングの練習をするのも良いでしょう。伴奏無しのアカペラで練習をしているとリズムの練習にはなりませんから、その点は注意してください。
音痴の原因③…リズムが取れていない
リズムを取る練習は、実は目で見ながら行うことができます。まず好きなミュージシャンが曲を演奏したり歌ったりしている映像を見つけましょう。テレビでもDVDでもインターネット上の動画でも構いませんが、繰り返し見ながら練習できる環境を整えることが大切です。
そのミュージシャンが曲に合わせて体を動かしたりしていれば、それが「リズム」です。それを見ながら一緒に自分自身も身体を動かしてみましょう。好きな曲を聴きながら行うので楽しく取り組めるのがこの方法のメリットです。
最初はゆっくりしたバラード調の曲よりも、少しアップテンポの曲が合わせやすいと思います。これを何度もやって憶えたら、今度は曲をかけた状態で、鏡を見ながら自分の身体を動かしましょう。動きが記憶とずれるようなら、理解はできていても身体がまだリズムを刻めていないということです。
これを何種類かの曲で繰り返すだけでも随分練習になります。慣れないうちは歌わずにリズムに集中して練習することをお勧めします。歌詞があるとどうしてもそちらに集中してしまうからです。
その曲のリズムをマスターしたな、と思ったら今度はリズムを取りながら歌も入れてみましょう。ここでずれるようならまた練習、と繰り返していれば自然と体がリズムを憶えます。なかなか合わせられないようなら、曲全体でなく、少しずつ分けながら進めていくと良いでしょう。
音痴を直すなら、恥ずかしがらずにボイストレーニングを受けることが大切
もともと「音痴」であることを悩んでいた人が、ここまで書いてきたことを一人で全て習得するのは、なかなか難しいかもしれません。そんな時は、恥ずかしがらずにボイストレーニングを受けることをお勧めします。
ボイストレーニングというと「プロを目指すような人ばかりが行くところで、練習内容のハードルが高いのではないか」と思われるかもしれません。しかし、実際には音痴を克服したい、という人もいれば、カラオケでかっこよく歌いたいという人などいろいろな人がトレーニングを受けています。年齢性別もさまざまで、学生さんもいれば年配の方もおられます。それぞれの方の目指すところや、その時のレベルを踏まえてトレーニングをしますので、恥ずかしいことは少しもありません。この機会にボイストレーニングで音痴を克服しましょう。